Q1:
この課で学習する大切な文型は、何ですか。
A1:
第4課と同じ動詞文ですが、ここで学習する動詞は
「行きます、来ます、帰ります」の3つの動詞で、
「~は~へ(動詞)ます」のように助詞の「へ」を伴います。
Q2:
この課で学習する大切な学習項目は、何ですか。
A2:
「行きます、来ます、帰ります」を使って人の往来についての表現を学習するほかに、「~は~です」の名詞文の過去を表す「~でした」を学習します。
Q3:
この課では、どんなことが話せるようになりますか。
A3:
第4課に続いて、動詞がさらに増えますので、 過去の行動についての話題が一層広がりますね。
休み明けの会話は「どこへ行きましたか」で始めることができます。 また、休みの計画についても話せます。「おしゃべりタイム」の表を見ながら、いろいろなところへ行ったこと、 行く予定であること、友人・知人・家族などが来日したこと、 または来日することなどたくさん話してもらいましょう。
Q4:
教科書以外に、支援者が用意したほうがいいものがありますか。
A4:
自転車、バイク、車、電車、地下鉄、新幹線、飛行機、船など乗り物の絵カード、 またはイラストがあると、いいでしょう。
また、「家族/友達/ひとりで行きました」という文を練習するときは、 家族と一緒、友達と一緒、ひとり等の絵カードかイラストが効果的です。
さらに世界地図や日本地図など各種の地図があると、話題が広がりますね。 地域の地図は、学習者が近隣の知識を増やすきっかけとなるでしょう。
Q5:
「どこへ行きますか」という言い方の代わりに 「どこに行きますか」という言い方もします。
「へ」と「に」はどのように違うのですか。
A5:
「どこへ行きますか」の「へ」は方向(direction)を示す助詞です。 「東京へ行きます」は「東京の方へ向かって行く」という意味合いになります。
一方、「に」は目的地(destination)を示す助詞です。 「東京に行きます」は「東京を目的地として行く」という意味になります。
ですが、実際に使われる場合は、どちらを使ってもかまいませんし、 同じ意味として用いられています。互換することができますね。
学習支援の場では、原則として、教科書にある方で練習するといいでしょう。 ですが、学習者が教科書とは異なる方を使っていたら、そのまま使ってもらってかまいません。
Q6:
2課で「どこ」という疑問詞を学習しますが、 この課では「どこも」が出てきます。
学習者が混乱しないようにするにはどうしたらいいでしょうか。
A6:
導入方法を工夫することで効率よく理解してもらえると思います。
まず、銀行、郵便局、レストランなど目的地としてふさわしい絵やイラストを準備してください。
そして、「どこへ行きましたか」という質問と同時に銀行の絵を提示して、 「銀行へ行きました」という答えを引き出します。
次に、「どこへ行きましたか」と同時に他の絵を順次提示して、 「~へ行きました」という答えを次々に導き出します。
何度かくり返した後で、「どこへ行きましたか」と同時に絵の裏面(白紙)を提示します。 そして、「どこも行きませんでした」という表現を導入します。これは導入の1つの方法ですが、こうすることで「どこ」と「どこも」 の違いを理解してもらえると思います。
ただ、導入方法は1つではありません。より良い方法はないか試行錯誤するのも、 支援することの楽しみの1つだと思います。
創意工夫を大いに発揮して、様々な方法を開発してください。
Q7:
「来ます」というべきときに「行きます」 といってしまう学習者がいます。どうしたらいいですか。
A7:
学習者が「~に日本へ行きました」といってしまうことがよくあります。
理由の1つは「行きます」を練習する機会の方が「来ます」を練習する機会 より多いということがあるでしょう。
「○○へ行きます」という文の「○○」に入れることのできる場所や地名は無尽蔵にあって、 十分に練習することができます。
一方、「□□へ来ます」の「□□」に入れる地名や場所はどうでしょうか。 「日本、ここ」の他に学習者と支援者がいる地名、場所など 限られたことばしか入らないのではないでしょうか。それだけ練習する機会が少ないということでしょう。
ですから、「いつ日本へ来ましたか」など「~へ来ました」という質問を意識的に多くして、 練習の機会を増やすようにしたら、いかがでしょうか。
Q8:
「電車で行きます」のように、 電車やバスのような乗り物の場合は「~で」となりますが、
「歩いて」というときだけ「~で」になりません。どうしてでしょうか。また、学習者にはどのように説明すれば、いいでしょうか。
A8:
「(乗り物)で」というのは、名詞に手段を示す助詞の「で」が接続した形です。一方、「歩いて」は動詞「歩く」の「て形」といわれる形です。
「て形」は国語文法では動詞の連用形に助詞の「て」が接続した形ですが、 外国人が日本語を学ぶ場合は「て形」という1つの形としてとらえます。
「て形」は第14課で学習しますので、この課では文法的な説明はしないで、「歩いて」という表現をそのまま覚えてもらうようにするといいでしょう。
各国語でも同じような違いがあることが多いので、学習者には理解し易いと考えられます。
Q9:
「~さんと行きます」のように、同伴者がいるときは 「~と」となりますが、「ひとりで」というときには「~と」になりません。
学習者にはどのように説明すれば、いいでしょうか。
A9:
特に説明はしないで、教え方の工夫をしたら、いかがでしょうか。
家族の写真を見せて、「きのう夫とスーパーへ行きました」、 「日曜日に家族と海へ行きました」などを導入し、その後、写真を裏返して、「けさひとりで銀行に行きました」を導入します。
「(同伴者)と」と「ひとりで」の違いは各国語にあることが多いので、 学習者にはすぐに理解してもらえるでしょう。